
2022年3/1(火)〜3/10(木)
花の香りで、物語がうごきだす。
春といえば、誰にでも思い浮かぶのが、来る季節を待っていたように咲き始める花の可憐さではなかろうか。梅、ロウバイ、椿、水仙、菜の花、シクラメン、桜、たんぽぽ、桃、チューリップ、モクレン、クレマチス、シバザクラ、ハナミズキ、ラベンダー・・・。花の名前を思い出しながら、過ぎた物語、これから咲くであろう物語を一人で想像しながら、想い出を連れてくる、あんな話でもしませんか。
>> ゲストルーム <<
白木蓮の潔さが、語りかけてくる。
❝ 「それはもう、通り一面が白く輝き、この風景を見ると、春の訪れって、こういうことねって、実感できるの」と、高層ホテルの窓辺から下の通りを眺めながら、あの方は季節を描写した。白木蓮が街路樹になっている街があるという。でも、開花した途端に3日もせずにポタッと落ちてしまうらしい。「白い小鳥が、枝いっぱいにとまっているのを見ているうちに、鳥がとびたつように、落ちてしまうの」と、窓から下を眺めながらの白いガウンのあの方から、ハクモクレンの話を聞いた。その時から、私の中に白木蓮が棲み始めた。❞

2022年3/11(金)〜3/20(日 )
3月の微熱のある風景【 許す 】
志を同じくする者の中に、過失があり、どうしても再出発をしなければいけない時のために用意されるボタンを【 許す 】
>> 3月のとあるある日 <<
【 許す 】 さしつかえないと認める。ゆるめる。
❝ 簡単な解釈で言えば、すべてをゼロにして、きれいに再出発を計ったかに聞こえるが、この許すの中には、いちがいに一語で片づけられない複雑な糸が絡まっていることを理解することで、すべてが許される。
男の許すは、すべてのことを飲み込んだうえで、自分ならどうしただろうと考えてから、次に進む。
女の許すは、すべてのまわりのことに消毒剤を噴霧し、すべてのことはなかったことにし、次に進む。
こんなことを書いてしまうから、 女の方から許してもらえないのも、わかる気がする。❞

2022年3/21(月)〜3/31(木)
ホテルの窓では、ムービーが舞っている。
夜桜が、綺麗に街を彩っています。ちらほらと風に乗り、花びらも舞いはじめました。人それぞれに、この季節には、春が届けてくれる物語があるようです。出逢いがあり、物語が動きだし、予期せぬ明日になるのか、それとも、ちょっとしたつまずきが生じ、立ち往生がおきるのか。南風がそよいできたホテルの窓辺です。
>> ティールーム <<
記憶は刻まれて、消えることはない。
❝ A5の見開きで1週間分、この20年ばかり、1年間の記録として、日記がわりの手帳をつけていましてネと、重ねてきた記憶にも、優劣をつけがたいシワを刻まれたお方。梅の香が流れ始める頃に25年ぶりの再会がありましてね。それを機にして、私は花の名前を憶えることができはじめました。と、一人語りが始まった。3月のページを繰りながら、3月には、 17日、31日と心が動いた日があり、その日から、今の私が再始動したのかもしれません。新しいページにインクを滴らせるために出逢いはありそうだねと、梅の残り香に、遠くを視つめたお方。❞