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アンカー 1
Cacti
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2021年12/1(水)〜12/10(金)

最初の一杯は、空腹が礼儀。

さて、今年は、どんな風に吹かれながら、コートの襟を少し立て、長めの裾を翻し、一呼吸の深い息をため、ちょっと重めの扉を押す。中に入った途端に、どんな音楽が流れているのかで、今日これからの運勢が決まるようだ。私の好みを言わせて貰えば、誰も先客がなく、外の空気が室内に忍び込んだ瞬間がなんとも言えず、たまらない。

>> PM9 : 00    バーカウンター <<

バーカウンターは、会話の練習場。

午後9時のバーカウンター。食事を終えた後のこれから始まる二人の儀式のためのウォーミングアップ。私は、食事どきの対面する行為をあまり好まない。伏せ目がちになっても、斜め上を仰いでも、その仕草は、目の前の視線をモロに受ける事になる。少し語りかける内容が濃くなってきた二度目の冬、私の右隣をこの方は好む。彼の中指がコースターを弾く癖が合図になり、私たちの会話のゴングが鳴らされる。

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2021年12/11(土)〜12/20(月)

12月の微熱のある風景   【 眺める 】

心の余裕を確認するために、眺めるという瞬間があるのではなかろうか。決して一点のどこかに集中する訳でもなく、全体の輪郭を掴むように、視線を左から右に、返す刀で右から左に、それでいて焦点はどこにもあっていないのが理想で、呼吸もいっさい乱れるところがない。空気を見ているとも言える。

>> 12月のとあるある日 <<

【 眺める 】はるかに見る。見渡す。つくづくと見る。

私の友人にゴルフコースを設計している人がいる。彼はどんな時にも100m先に焦点を合わせ、徐々に自分に向けて、その焦点を近づけてくる。と、言っている。職業柄でそんなクセがついたらしいが、日常でも活かせたいものだ。全体をつかみ、細かい部分に意識を移す。賢い人間のルールかもしれない。

男の眺めるは、清濁併せ呑むの濁の中からも清を見つける。

女の眺めるは、清濁併せ呑むの清の中にも濁を見つけてしまう。

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2021年12/21(火)〜12/31(金)

笑顔の往来も増え、ロビーがふくらんでいる。

この季節のホテルでは、一年間の総決算でもあるのでしょう。仲間内でのパーティー、会社の部署での忘年会、なかなか出かけられなかったことへの返答としてのミーティング。ロビーでは、「私を見てョ」とばかりの〇〇ショーとでも呼ばれるのでしょうか、色とりどりの出逢いが、繰り広げられています。やはり、人と人との関係は、逢うことからドラマが始まるようです。

>> PM4 : 00     ロビー <<

女性の自信は、すべてを支配する。

❝ 視界のずっとむこうから、一人の女性が、こちらに近づいてくる。私はある女性と年に一度、このホテルで密会ゴッコを行なっている。近況報告会ですけどね。でも、下手な男友だちよりも、もっと深い関係だとも言える。先の女性が近づいてきて、一瞥をくれながら3m先を通り過ぎて行った。一瞬、目が合ったような気もするが、別人だったのだろうなと、約束の時間がくるのを確認した。その時、肩に手が触れ、「いいオンナだなーつて目をしてたわョ」「だけど、私だと確信が持てなかったみたいネ」と。女性の一年間の進化に脱帽した。

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